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2017/05

06[土]

「何もかも便利に生活することが本当に幸せなのでしょうか?」 [DESIGN(設計)]

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機会があって、「Memo男の部屋」建築家インタビュー記事を見返しました。
10年前に出版されたもので、自分のことながら新鮮に感じました。今なら話の力点は少し違うかもしれませんが、基本的なコンセプトは通底しています。最近はお話していないことも多いのでご覧いただければと思います。
建築を志したきっかけなども話しています。


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 木内一徳さんは、建て主それぞれの「自分らしさ」を引き出すというスタンスのもとに家づくりに取り組んできた建築家だ。木内さんのアトリエのHPには「住む人の価値観を最優先に考え、常識や世間体に流されることのない、個性にジャストフィットする家をつくり続けています。そこに住む家族にとって最高の場所にするために」というメッセージが書かれている。「家は個の器として住む人の価値観や個性があふれたものであるべきだ、と考えている」という木内さんに、その理想の住まいがどんなものであるのかを、建て主それぞれの個性が違うことを含めたうえで聞いてみた。
 「確かに、建て主それぞれにとって違ったものですが、同時に、その時代・社会に生きるものの共通性もあります。その共通している部分が、自然の生命力や時間の流れを感じることができることではないかと考えています。光や風の動き、植物の成長など自然を取り込み、それを感じることができるような建築をつくりたいと考えています。そのためには建築は生活の背景としてシンプルで静的なものにすることが多いです」
 自然の生命力・時間の流れを感じることができるのと。実はここに、木内さん流の家づくりの極意が隠されている。
 「現代の住環境において快適ということ、過剰なまでに機能的・人工的なものが求められています。何もかも便利に生活することが本当に幸せなのでしょうか?多少暑さや寒さの変化を持つ、自然の移り変わりを体感できる家の方が、本来、人間の持つ五感を使うことができ、いきいきと暮らせる家になるのではと思うのです。僕は朝ジョギングをしますが、早朝の澄んだ空気はすがすがしい気分にさせてくれます。厳しい中にも、ありのままの自然を受け入れることの心地よさを感じることができます。動物としての身体性を取り戻せるからでしょうか。
 こうした感覚が暮らしの中にあるということ、それが本来人間が持っている心地よさの感覚につながっていくのです。例えば落葉樹は掃除が大変だという建て主が、いつの間にか暮らしの中でいつの間にか暮らしの中で季節の移ろいを感じることの喜びを感じるようになったとおっしゃったことがあります。生活の中のほんの小さなひとコマではありますが、この建て主にとって自然の生命力・時間の流れを感じるという実感が、掃除をするわずらわしさをも楽しみに変えてしまったのです」
 建て主それぞれにぴったりと合う家をつくるために、もう一つ木内さんが大切にしているのが、建て主の言葉にならない潜在的な理想をできるだけひきだすということだ。「入念な打合せには、建て主の希望を聞くとともに言葉にならない潜在的な理想をできるだけ引き出すという作業が含まれています。この潜在的な理想を整理し、組み立てながらカタチにしていくのが建築の仕事。建て主から出た要望の背景に何があるのかを感じ取ることも大切です。そしてその思いを実現していくのです。
 大阪の住宅ですが、煙突の付いた大型の石油ストーブ(配管で給油)を設置したことがあります。建て主が北海道に赴任した時に経験したもので、快適さと、当時の記憶を留めるためにも煙突付きのストーブがどうしてもほしいということで、メーカーを探して取付ました。当地で奥様を知り合いご結婚されてますので、青春の良い思い出がたくさんあるんじゃないでしょうか。やはり、その方が歩んできた人生を家に表現できるのは面白いですね。建て主に満足していただける家づくりは住みたいと思える要素をどれだけデザインや設計等に組み込めるかということ。こうしたいという要望は建て主ひとりひとりによって様々で、玄関を友人の作品を展示するギャラリーにしたり、趣味のスペースをドンと大きくつくったりと、決して同じものではないですね。そういった家づくりというカタチで表現された個性を生かしながら、共に生きていく家を築いてほしいと考えています。単に建て主の要望を実現するための家以上のもの、それをカタチにするためにビジョンを明確に持って家づくりに取り組んでいます」

 建て主にとって、より自分らしさに合う家を実現するためには、設計すること、そしてそれをカタチにしていくことをトータルに行うことが重要だとも木内さんは話す。木内さんが代表を務めるd&bアーキテクチャーでは設計から施工までトータルに関わるという家づくりのための理想的な環境を整えている。
 社名のd&bアーキテクチャーは「design&build」と「depth&beauty」の意味を持たせていますが、奥行きのある美しい建築を考え・つくることを目指しています。現在はストックアンドフロー(良質の住宅をストックし流通させる)が必要な時代で長寿命住宅が求められています。構造の耐久性や設備の更新、間取りの可変性が一般的に言われていますが、別の視点では、遺そうと思えるような美しい建築をつくらなければいけないということも言えるのではないでしょうか。そのような価値のある建築を設計できることと、設計から施工、維持管理、改修までトータルに関われるのが長所だと思います。
 父が大工でしたので子供の時から工事現場に行く機会は多かったのですが、上棟の日の光景が印象に残っています。まだ基礎しかないところに、早朝から一気に家を組上げてしまう見事さ、そして夕陽を背景に建ち上がった木組みの美しさにかんどうしまして、漠然と建築をやろうとは小さいころから考えていました。大学に落ちていたら大工になっていたと思います。そういう意味でも、現場のたいせつさというものが僕の中では大きいのかもしれないですね。ただ、建築を勉強しだしてからは、あれほど美しかった骨組みが仕上げられていくにしたがって貧相になっていくことの方が気になりだし、多くの職人の労力を積み重ねながら、なぜこんなひどい建物・まちができてしまうのかと憤りさえ感じました。設計が大事だということを痛感したんです。この両方の経験が、現在の僕につながっているのでしょう」
 
 最後にこれから家づくりを考えている人たちへアドバイスがあればと聞いた。
「捨てることって難しいと思いますが、重要な気がします。反りや不揃いを考えたら無垢材が使えませんし、ガラス面を大きくしたら断熱性能は下がりますし、吹抜けにしたら暖房効率は悪くなります。捨てることによって、もっと大事なものが手に入ると考えてください。するとうまくいくと思います」求めていることの裏側にあるリスク。でもそのリスクをものともしない豊かな生活があること。まずは、何を優先すべきなのかを共に考え、実現へと導いていける建築家に出会えることこそが「自分らしく暮らせる家」を手に入れる鍵となる。


Posted by d+b staff at 11:24   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )


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