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家づくりはどう始めればいいの?オススメの進め方、依頼先の選び方、デザインの考え方を解説!
「そろそろ家を建てたいけど、何から始めたらいいんだろう・・・」
「理想はこんな感じ!でも、家っていくらくらいかかるのかな?」
「そもそも、どんな家がいいの?みんなが納得できる家にしないとね」
家づくりを始めようとすると、わからない?ことがたくさん出てきます。
もしかしたら、あなたの頭の中はこんな感じかもしれません。
そうそう家づくりを経験することはありません。ほとんどの人にとって初めての経験!
ですので、あなたの頭の中がモヤモヤしていたとしても、ぜんぜん無理のないことなんです。
家づくりには、長い時間と大きなお金がかかります!
この、人生の一大イベントに失敗したくないという気持ちよくわかりますし
その難しさも知っているつもりです。
私(木内一徳)は、今まで100軒を超える家づくりに携わってきました。
その、一つひとつの貴重な経験から、家づくりのノウハウをお伝えできればと思っています。
そもそも建物は、その時代に存在する技術と材料を使ってつくられます。
となると、現在のように情報がいきわたった社会では、家づくりにおいてもそれほど大きな失敗はしないでしょう。
正直、どこでどのように建てても大きな差はないといえるかもしれません。
ただ逆説的ですが、その小さな差が暮らしの質に大きな差になるとも言えます。
例えわずかな波動であっても、それが増幅し琴線を震わせるような空間になるように思うんです。
撮影:福澤昭嘉
それでは、家づくりについて進めていきましょう!
まずは、家づくり全体の流れや必要な知識を大づかみでいいので学んでください。
それから、どのような家にしたいのかをじっくり考えてみてくださいね。
目次
・情報集める
・依頼先選び
・設計依頼
・見積・工事
・竣工・引渡し
・家づくりの費用、いくらくらいかかっている?
・本体工事・別途工事・諸費用
・デザインには理由がある
・歴史・風土
・わびさび・シンプル
・光や風、緑を採り込む
・家族のつながり
・住み続ける
・社会・地域への責任をはたす
・プランを描いてみる
まずは、家づくり全体の流れは、こんな感じです。
この流れにそって、家づくりのポイントをみていきましょう。
・情報を集める
情報を集めるには、以下のようなものがあります。
WEB
現在では簡単に、いろいろなサイトの情報を集めることができます。
たくさんのハウスメーカーや工務店、設計事務所の自社サイトや、それらを比較したサイトが存在しています。
どうしても大手ハウスメーカーのサイトが目立ちますが、注文住宅全体でハウスメーカーが占めるのは約1/4なんです。
なので、大部分の家づくりを担っている小さな会社も見逃さないようにしてくださいね。
また、検索で上位表示させ広告料を稼ぐためにつくられた比較・情報サイトや、フランチャイズ本部の提供した外観写真など、再現性のないものを用いているサイトも多いので、そのつもりで取捨選択して利用するようにしましょう。
本・雑誌
大きな書店に行くと多くの住宅本が並んでいるので、今後、現れるであろう課題を俯瞰してみることができます。
読みやすさや信頼性の点で、やはりWEBよりも本や雑誌が優れていますので、ぜひ足を運んでみてください。
意外と、専門誌など思いがけない本からヒントが得られるかもしれません。
住宅展示場・モデルハウス
ハウスメーカーだけでなく、比較的規模の大きな工務店でもモデルハウスを持つ会社が増えてきました。
建物の良し悪しは、実際にそこに身を置き空間を体感することが大切です。
気になる会社があれば、見学に行ってみてはいかがでしょうか。
ただし、白紙の状態では何を見て、質問すればよいかわからないので少し事前学習してから。
また、優秀な営業マンがそろっているので、少々押しが強いのは覚悟の上でお願いしますね。
見学会 セミナー
モデルハウスがない工務店や設計事務所が開催しているのが、見学会やセミナー。
完成見学会は入居前の等身大の住まいなので、華美なモデルハウスよりも参考になることが多いかもしれません。
実際に工務店や設計事務所の担当者に会えることも、大きなメリットですね。
情報取集を進めながら、依頼先についてもみていきましょう。
・依頼先選び
後半にお話しする、実は「どんな家にしたいのか」を考えないと、依頼先を決めることはできません。
ですので、ここではザッと読み飛ばしてもらって、最後まで読んで、どんな家にしたいかを考えた後で、もう一度読んでください。
一般的に、依頼先には「ハウスメーカー」「工務店」「建築家・設計事務所」があるといわれます。
いずれも施工には工務店が関わるんですが、家づくりの窓口が3つに分かれていると捉えてください。
「あまり、馴染みがない業界だよな・・・」
そんな時は、飲食店に例えた方がピンとくるかもしれません。
家づくり依頼先 |
飲食店としたら |
特徴 |
ハウスメーカー |
ファミリーレストラン |
最大公約数をターゲット セントラルキッチン、大企業 |
工務店 |
うどん屋 牛丼屋 ラーメン屋 |
まちなかの小規模 フランチャイズ加入店増 |
建築家・設計事務所 |
仏料理店 高級寿司店 |
こだわりのシェフ (家づくりの場合はレシピ作成のみ) |
それぞれの特徴をもう少し補足しておきますね。
ハウスメーカー
メーカーにより工場生産率は違いますが、規格型住宅なので品質の信頼性が高いといえます。
規格型プランなので営業マンが初期プランニングすることが多く、特注は難しいので比較的余裕のある敷地環境に向きます。
工務店
社長の経験により、営業型・施工型・設計型工務店になる傾向があり、それぞれ得意分野がかたよりがち。
自身が大工として働く個人店から、年間100棟近く施工するビルダーまで規模は様々です。
ローコスト住宅から、設計事務所のデザイン住宅や寺社仏閣の施工ができる工務店まで技術力もバラつきが大きいのが実情です。
建築家・設計事務所
施工とは別契約なので、完全に建て主の利益を最優先した代理人になれる。
ただし、よく見る「建築家と家を建てる」というような、工務店が運営するフランチャイズではシステム上難しいですね。
ちょっと、見つけるのがたいへんかもしれませんが、少し手間をかけて探してみてください。
地元の零細・中小工務店が半分以上のシェアをにぎっているという産業構造は、他産業にはない建築の一品性ゆえの特徴。
よって、依頼先の選択肢が多すぎて、クルマや家電選びのようにいかない傾向にあります。
それでも、情報収集が進めばある程度見えてきます。
そうして、依頼先の候補をある程度絞れることができれば、個別に相談してみましょう。
プランニング前の事前相談はほどんどの工務店・設計事務所で無料で対応してもらえます。
(敷地測量図や現地写真を用意すれば、具体的に相談しやすいですね)
依頼先の候補が決まったら、まずプランの依頼。
・設計依頼
いきなり設計契約するのは、よほど信頼できるところでないと躊躇(ちゅうちょ)しますよね。
まず、ラフプランを作成してもらって力量を把握してから、正式依頼したいところです。
(費用については無料から10万円程度に設定されていることが多い)
「とりあえず図面だけでも描かせてください」というところもありますが、
あまり営業が過ぎると、最終的にその費用を負担することになる、そこで家を建てる人のことを少し心配してしまいます。
少し費用を負担した方が、断るときに負担が少ないのではないでしょうか。
また、一度のヒアリングでは要望を伝えきれないもの。
プランを見て初めて、ぼやけていた希望が明瞭に見えてくるかもしれません。
そんな時は修正を依頼しましょう。
そうして、一緒に家づくりを進めていけそうだと納得できたら正式に契約書を交わします。
この契約書は、
ハウスメーカー・工務店の場合は工事請負契約、設計事務所の場合は設計監理委託契約。
ハウスメーカー・工務店の場合はこの段階、詳細設計の前に大きな金額の契約をすることになります。
なんども打合せを重ね、修正を繰り返しながらプランを練り上げていきます。
設計の担当者と価値観が合えば、外装や内装の材料・色、キッチンや水栓、ドアノブなどの選定はすごく楽しい時間になるはずです。
設計事務所の場合は、基本設計・実施設計と進み、図面が完成した後、工務店に見積り依頼。
必要に応じて見積り調整の上、建て主と工務店が工事請負契約を結びます。
・工事
いよいよ工事が始まります。建て主として何度か、現場に足を運ぶことになります。
地鎮祭・近隣挨拶・地縄確認
神主さんによる地鎮祭を行うかどうかは任意ですが、できれば近隣挨拶には工務店担当者と一緒に廻ってください。
その方が、近所の方は建て主さんの顔が見えると安心してくれます。
建物の位置にロープ(地縄)が張られているので、建物の配置を最終確認します。
(土地や建物がすごく小さく感じられて、不安にかられるかもしれませんが、建ち上がると大きく感じるものですので安心してくださいね)
上棟
基礎ができた後、工場で加工してきた建物の骨組みを現場で一気に組み上げます。
上棟式を行うかどうかは任意ですが、ぜひ現場には行ってみてください。
上棟後の骨組みが建ちあがった姿は、どの家も本当に美しいと感じます。
また、隣家の窓の位置との関係などが見えてきます。仕上げ材の変更もこの頃がラストチャンスになります。
・竣工・引渡し
工事が進み最終段階になると、照明が灯り、木々が植えられ、無機質だった家に生命が宿ります。
建物が完成すると、確認検査機関等の検査、建て主の検査(手直し)を終え、設備などの取り扱い説明、引渡しと進みます。
完成が近づくと、建物の登記・住宅ローン・火災保険・引っ越しなどの準備、電話(インターネットは工事初期に)やガスの開栓の申し込みなどもお忘れなく。
撮影:福澤昭嘉
時間と情熱を傾けた住まいの完成は、きっと感動的だと思います。
(建築にはそれくらい大きな力があります)
暮らしはじめると、日常の様々なシーンで新たな驚きがあるはず。小さな変化を見逃さずに生活を満喫してくださいね。
撮影:福澤昭嘉
ここまで、家づくりの流れを見てきました。
次は、家づくりの費用についてです。
・家づくりの費用、いくらかかっている?
公的な機関である住宅支援機構の調査を見てみましょう。
地域別主要データー(2018年度)です。
上記データーから、フラット35利用者平均の建設費などがわかります。
全国平均で
建築主の年齢 42.7歳
家族数 3.7人
世帯の年収 592.8万円
住宅面積 126.8㎡
建設費 3390.4万円
となっています。
(都市圏の建設費はもう少し上がりますので、上記表から確認してください)
住宅ローンに関しても住宅支援機構のフラット35のサイトが便利です。
「借入金額」「現在の年収」「毎月の返済額」から借入れ額をシミュレーションできます。
https://www.flat35.com/simulation/sim1.html
下部の「資金計画シミュレーション」もおススメ!
住宅資金だけでなく、生活資金や子供の教育資金、老後の資金がどれくらい必要かを想定し
ライフプランが作成できるので、ぜひやってみてください。
住宅支援機構・フラット35のサイトでは最新の金利や、フラット35Sの金利引下げなどもチェックできます。
https://www.flat35.com/index.html
「思っていたより、建設費ってかかるんだな・・・」
という印象の方が多いのではないでしょうか?
これは、別途工事の金額を増やして、坪単価を低く見せようという業界の思惑(おもわく)があるのではないでしょうか。
実際より安くできると判断してしまいがちですが、お気をつけください。
・本体工事費・別途(附帯)工事費・諸費用 カタログや広告の坪単価では家は建たない! よく、ハウスメーカーのカタログや広告に表示されている坪単価(3.3㎡あたりの建設費)○○万円というのは本体工事費を指していることが多いようです。 すなわち、表示されている坪単価だけでは家は建たないということになります。 実際には、別途工事費という本体工事費に含まれない費用が必要になるんです。 ハウスメーカーや工務店によって、少しずつその内容が違っていますが、 一般的には、既存建物の解体費や地盤改良工事費、建物外回りの塀や門扉、屋外駐車場、植栽などの外構工事費、 照明器具工事費やカーテン工事費、空調工事費、屋外電気工事費や給排水などの引込み工事費などが別途工事費になることが多いようです。 本体工事費は、家を建てるために必要な総費用の75%程度だといわれます。 さらに必要なのが諸費用。 結構いろいろあって、印紙税や登録免許制、不動産取得税などの税金や登記費用、火災保険、引っ越し費用、建て替えに伴う仮住まい費用などが主なものです。 家づくりのためには、本体工事費+別途工事費=建築工事費以外に、こうした諸経費まで見込んでおく必要があるのです。 設計料タダはウソ? 建築家・設計事務所に依頼する場合は、設計料が必要になります。 住宅を注文される方のニーズに応じて、住宅の基本的な計画から、基本設計、実施設計(詳細設計)を行い、見積りをとって工務店を決定。 さらに、工事が設計図通り行われているかどうかを監理する。その対価として設計事務所に払う費用が設計監理料です。 じゃあ、ハウスメーカーや工務店に住宅を頼むときは設計料はいらないことになる? 一見そう見えるかもしれませんが、設計は家づくりに欠かせない作業なので、設計事務所に頼まない場合でも、費用としての設計料が発生しています。 ハウスメーカーや工務店によっては、「設計料は取りません」という場合もありますが、残念ながら、工事費に設計業務の実費が加算されているのが実態です。 全国平均の建設費3390万円の内訳は、こんなイメージでしょう。 本体工事費 68万円×38坪 =2584万円 別途工事費 198万円 設計監理費 300万円 消費税 308万円 合計 3390万円 (諸経費 100万円) このような「別途工事費」は、建築業界のなかでも注文住宅だけの特殊な表示方法でもあります。 別途工事費といっても実際に必要な費用。 そうすると、坪単価ではなく、あくまでも費用総額で比較検討しないといけませんね。 長々と書いてきましたが、ここまでが「家づくりの流れ」と「家づくりの費用」についてです。 ここからは、どのような家にするかという、家づくりの本質的な部分です。 ココがしっかりしていないと、家づくりの途中でふらふらと迷走してしまうことになります。 「この家はUA値が0.46でHEAT20・G2グレードをクリアしていますので、冬でも暖かいですよ」 「耐震等級3で制振ダンパーも標準仕様で、大地震にも安心です」 「奥様のご負担を減らすため、最短の家事動線を考えています」 「季節ものを収納する納戸や、各部屋に収納をたっぷりとっているので部屋が片づきます」 こんな風に、住宅展示場で営業マンから説明されるかもしれません。 どれも、納得できるものです・・・ しかし、本質的なものではありません! 「自分たちの家なので、思いっきり好きなことをしよう!」 「さて、理想の間取りを描いてみようか!」 と考えて、紙とペンを用意しても、すらすら描きだせる人って少ないのではないでしょうか? ・デザインには理由がある 家の間取りを描くということは、住宅を「設計=デザイン」するということですね。 この「デザイン」という言葉は、「アート」と比較するとわかりやすくなります。 「アート」は自己表現であり、「デザイン」は社会的問題解決といわれます。 「アート」は自由で制限のない状態で個を表現するものであるのに対し、 「デザイン」は与えられた制限の中で最大の効果を出すためのプロセス。 家づくりは、やはり「アート」ではなく「デザイン」。 家を考える(=「デザイン」)の前に社会共通の課題を理解する必要があるということになります。 「デザイン」は論理に支えられているんです。 といっても難しいものではなく、すでに、あなたの潜在意識にあるはずです。 常識的なことも多いので、そんな部分は読み飛ばしてくださいね。 ・歴史、風土 家の原型は「巣」。 野生の動物は子供ができると「巣」をつくります。 「巣」をつくるのは子育てのためで、生物学的には、家族の目的は子供を産み育てることだそうです。 私たちヒトの祖先も子育てのために「巣」=「家」をつくります。 「家」には他の動物や、風雨から身を守るシェルターの役割があるので、ずっと住み続けます。 寒い地域では、クマの巣のように洞穴に閉鎖的な「家」を、 暑い地域では、鳥の巣のように木の上に開放的な「家」をつくるのは自然なこと。 巣のような家は、やがて竪穴式住居になり、現在の家の原型である高床式住居に発達します。 また家は、地方の気候・風土に左右されてきました。 例えば、西欧と日本では家の形が異なります。 木が育ちにくい気候の西欧では、豊富に採れる石灰石が主な建築資材。 そのため、積み上げられた重厚な石の壁と、その壁を穿つ(うがつ)小さな窓が印象的です。 ただ石造りのため造作はなく、その分、家具の製作技術が発達します。 一方、木が育ちやすいモンスーン気候の日本では木が育ち、木造の家が主流。 雨を防ぎ、夏の日射を避けるため、屋根の軒を深く張り出します。 そうして、温暖で豊かな自然に対して開放的な形態となり、 西欧の「壁の建築」に対し、日本は「屋根の建築」ともいわれます。 また、大工の技能が発達したことから、床の間や押入、収納が造り付けられました。 反面、家具製作は西欧ほど発展しませんでした。 (今でも高級家具は、西欧の家具メーカーが主流ですね) ・わびさび、シンプル いまから約500年前に、「わびさび」という日本独自の美意識が生まれます。 「さび(寂び)」と「わび(侘び)」とは、自然が織りなす「寂びれたもの」と「それを美しいと思う心」 このころ建てられた「茶室」では、 庭の季節の移り変わりを、極限まで小さく、簡素な素材でしつらえられた室内に引込み、 ゆったりとした時の流れの中、使い込まれた味わいの深い茶器で客をもてなしました。 周囲をピンクに染め上げながら一瞬で散ってしまう桜や、紅葉の跡の静寂。 そうした、静けさや変化する物事に美しさを見出す感性は、確実に私たちのDNAに刻まれています。 この「わびさび」の簡素さと似た概念に「シンプル」があります。 約150年前の西欧で、モダニズムという芸術運動によって「シンプル」が生まれました。 かつて、青銅器の精緻(せいち)な文様や、バロック・ロココ様式の複雑な曲面は、支配階層の権力の象徴として存在しました。 それが、近代の民主化運動によって否定され、様式美が排斥されます。 モダニズムでは、権力の象徴としてではなく、人間が等しくいきる権利として機能をシンプルに形にあらわします。 モダニズムとは、ものが複雑から「シンプル」に脱皮するプロセスそのものといえます。 生まれた背景は違いますが、「シンプル」に先駆け「わびさび」が誕生しています。 この二重の簡素さを併せ持つ私たちにとって、簡素さは押さえておくべきデザインのカギになるのでしょうないでしょうか。 ・光と風、緑を採り込む 森の中での深呼吸、青空の下での水遊び、人と自然が触れ合う時に幸せを感じるのはなぜでしょうか? それは、私たちは自然の一部だから、母なる自然に抱かれると安心するように脳が太古の体験を覚えているのではないでしょうか。 住宅設計にあたっては、家の中に光や風、緑を採り込むことを最優先したいところ。 まず、敷地周辺の環境を読み込みながら、光や風を採り込むのに最適な配置、プランを検討し、敷地の持つポテンシャルを増幅させることが重要です。 自然と共生するには、伝統的な「縁側」や「土間」のようなウチとソトの中間的な空間が有効。 「外部のような内部空間」と「内部のような外部空間」を設けると魅力的になります。 縁側は日なたぼっこをしたり、世間ばなしの場で、日本人の原風景となっているのではないでしょうか。 縁側を拡げてデッキテラスとすれば、室内と連続し、屋根のないリビングができあがります。 また、光や風を採り込むために大きな窓を設けますが、注意したいのはプライバシー。 外から室内が丸見えになってしまっては、どうしてもカーテンを閉め切りになってしまい、せっかくの窓の効果を発揮できません。 自然を採り込むため、設計にあたっては、外部空間から考えることが大切です。 そうすると、外構は別途にするなどということは、ありえないですね! ・家族のつながり 住まいのカタチは家族の関係を決定づけます。 逆に、家族の関係が変わったのに住まいが変化しないと、窮屈で住みづらいものになってしまいます。 例えば、「サザエさんの家」の間取り。 この磯野家の間取りは、昭和30年前半までによく見られた間取りですが、 特徴としては・・・ ・一番環境のよい南側の庭に面して客間を設けている。そのため、北側の茶の間や台所は薄暗くなってしまう。 ・玄関から廊下や縁側を通り、各部屋へ行き来できる。 ・冠婚葬祭にも利用できるように、和室を続き間としている。 ということがあります。 現在の間取りとはずいぶん違いが見られますね。 今では冠婚葬祭が式場の利用により外部化し、いわゆる「ハレ」が家から消えたことが一番大きな違いです。 その結果、現在の住宅は、家族が快適に過ごすことが唯一の目的になり、住まいの中心は客間から居間や食堂に移ることになりました。 さらに、廊下も必要ないという考え方もあります。 玄関から直接、リビング・ダイニングにつながり、そこから個室へ出入りします。 いわば、リビング・ダイニングはホテルのロビーのようなパブリックなスペースと考えています。 下の写真は、玄関から直接つながるリビング・ダイニング。 ここから、写真左手の水廻りや、2階の書斎や個室に連続します。 ちなみに、吹抜けには、このように階をつなぐ効果もありますね。 (さらに、写真右手のテラスから自然を引込み、まちへとつながっていきます) ・住み続ける 家づくりが上手くいけば、充実した暮らしに満足されることでしょう。 そして、その暮らしが長く続くようにしたいと考えられると思います。 そのために、住宅設計の際に気を付けておきたいことは以下の項目です。 フレキシブルに これからも、家族の関係や、住まいのカタチは変化していくことは間違いないでしょう。 また、家族の成長にともない家族構成が変化することは想定可能です。 例えば、子供が小さい頃は、兄弟姉妹が仕切りのない大きな部屋で過ごし、独立した部屋が必要になった時に間仕切り壁を設置。 やがて、成人し独立した後は、夫妻のホビールームなどに活用することなどが考えられます。 もう少し長いスパンで考えると、次の世代へ引き継ぐ時が来るかもしれません。 その時には、家全体をリノベーションすることになる可能性もかなりあります。 そうした変化に対応するためには、あらかじめ家の構造にも配慮しておくとよいでしょう。 家の周囲の外壁に耐力壁をできるだけ配置し、内壁を非耐力壁にしておけば自由に間取りを変更することがきます。 持続可能な家づくり 現在の住宅は30年以下で建て替えられています。 ところが、伐採した後に植樹した木が育ち、建築材料として使えるまでには60年間かかります。 少なくても、その60年間は使える家でないと、持続可能な家づくりとは言えないんです。 耐震性・断熱性 キッチンや浴室の水廻りや、内装外装などのリフォームに比べて、耐震性や断熱性を高めるリフォームは、構造躯体に影響するため高額な費用がかかります。 そうすると、将来高額な費用を発生させないためには、水廻りや仕上げ材よりも耐震・断熱を優先する方が良いということになります。 この耐震や断熱、パッシブデザインの技術・性能はここ20年で大きく発展、普及しました。 もう一般的に、計算で性能が確認できるようになってきていますので、効率的に費用対効果を得られます。 住み続けたくなる家 長く住み続けるには、(当然ですが)前提として、暮らしやすく、時間が経つにつれて味わいがでてくるような家でないといけません。 木が反ったり、色が変色したりという欠点が少々出てきても「あばたもえくぼ」と思える、そんな愛おしく、美しい家をつくりたいものです。 そのためには、住宅設計の際に後悔することのないよう、考え抜くことしかないのではないでしょうか。 ・社会、地域への責任をはたす 一軒一軒の住まいは室内の暮らしの器(うつわ)であると同時に、まちなみを構成する壁でもあります。 美しい佇まいでいることはもちろん。まちなみに対して、個別の生活をさらけ出しすぎない配慮も必要ですね。 道路に対して大きな窓が開いていると、道行く人も目のやり場に困ってしまいます。 戦前のように、瓦屋根やしっくい・板張りの壁、格子などで統一された美しいまちなみは、もう再現されることはないでしょうが、 現在のクルマ社会や多様な暮らしに即した、景観への配慮をみんなで進めたいところです・・・ そういう意味では、「戸建て住宅も公共建築である」といえますよね! ここまで、いい家をつくるための基礎になることを見ていただきました。 どの程度の「高み」まで目指すかは、人によって異なると思います。 ちなみに心理学者のアブラハム・マズローが提唱した「欲求の5段階説」によると、人間の欲求は低次の段階から高次の段階まで5段階あるといいます。 ①「生存の欲求」=動物として命を保ち、生存したいという欲求 ②「安全の欲求」=危険がなく、安全に、安心して生活したいという欲求 ③「愛と所属の欲求」=集団に属したり、パートナーや仲間を求める欲求 ④「承認欲求」=他者から評価されたい、褒められ認められたいという欲求 ⑤「自己実現欲求」=あるべき自分になりたい、成長したいという欲求 できれば、高次までいきたいものですね。 欲求以上の住まいは、なかなか生まれないものです。 ・プランを描いてみる 余裕があればプランを描いてみてはいかがですか? 決して、きれいに描く必要はありません。 設計者に希望を伝えるための準備運動程度に考えてください。 そのために、準備するものとしては・・・ まず、方眼紙があると便利です。 木造の場合は910㎜がモジュール(基準)になることがおおいので、9.1㎜の方眼紙を用意してください。 (10㎜の方眼紙を縮小コピーするなど) 1/100の縮尺で、1cmが1mとなります。 次に敷地と方位を記入してください。 測量図がなければ、グーグルマップなどから予想した寸法でかまいません。 敷地周辺の環境が重要です。道路や隣家などをわかる範囲で書き込んでください。 方眼紙の2マスが畳1帖の大きさになります。 4マス×4マス=8帖 ですね。 主な部屋の大きさは、全体100~120㎡程度の住宅で、 LDK 20~25帖(キッチン・・・3マス 冷蔵庫・・・1マス) 洗面 2~3帖 浴室 2~2.5帖 トイレ 1帖 寝室 8帖+2帖(クロゼット) 子供室 4.5~6帖 納戸・収納 3帖 を基本にしてアレンジしてください。 できれば、外観も一緒にイメージできれば理想です。 頭の中だけで考えるのではなく、紙に描いて「手で考えること」がコツ! 発想段階から、寸法を押さえる段階になるとCADに移行。 こうしてできあがったのが、この住まいです。 ▷ 斜面を活かす家 https://drive.google.com/file/d/1XjS2h4Tg2iZcC-w9d8i0t5QeoB4BbncY/preview 2年近くかけて「自然に囲まれた眺望の良い場所」を探し、 1年近く打合せを重ね、イメージ通りの「家族がいつもリビングに集まり、暮らしを楽しむ家」が完成しました。 いかがでしたしょうか? 「家づくりの流れ」 「いくらかかる?」 「どんな家が良いの?」 についてみてきました。 もし、あなたの家づくりに役立てたとしたらうれしいかぎりです。 それでは、検討を祈ります。 いい家ができたら、教えてくださいね! 木内一徳 Kinouchi Kazunori d+bアーキテクチャー代表 d+b architecture 公式サイト https://www.d-b.co.jp/ 千利休・茶室「待庵」
撮影:福澤昭嘉
AllAboutから引用 https://allabout.co.jp/gm/gc/26692/[/caption]
撮影:福澤昭義
撮影:福澤昭義嘉
